組織開発コンサルティングレポートVol.006「幹部の意志疎通の質は企業の生命線」
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業種
企業経営
- 種別 レポート
幹部の意志疎通の質は企業の生命線 解説
株式会社日本経営 副部長 株式会社ミライバ 取締役 / 江畑 直樹
意思疎通不足で起こる本質のズレ
ある企業の幹部ミーティングでの話です。
Aさんの事業部では昨今、クレームが連続したり、スタッフの離職が相次いだりなど、複数の問題が同時に発生していることから、課題の本質になっているものが何かを全体で話し合うことになりました。
Aさんの事業部は売上規模が大きく、会社の生命線になっています。
社長も含め、幹部全員で3時間話し合いをして整理しました。
その翌月、Aさんに、前月の会議で挙がった事業部の課題にどのように向き合ってきたのかを確認しました。
Aさんからは、事業部で検討した対策内容と、その対策に今取り組んでいること、改善に向けて少しずつ前進している旨の発表がありました。
しかし、他の幹部はAさんの発表を聞いても理解ができませんでした。
なぜなら、その対策をしても、事業部の本質的な課題が解決するようには思えなかったからです。
どうやら幹部ミーティングで整理した事業部の課題の本質と、Aさんの認識していた課題の本質がずれたものになっていたようです。
そこで、Aさんが何故誤った認識をしてしまったのかを話し合いました。
現場の課題を自分ごととして捉える
はじめはAさんの考え方や捉え方について問題提起する意見が挙げられましたが、しばらくして社長より、次のような発言がありました。
「私たちの意志疎通レベルがこの場に表れている。
幹部ミーティングで決定したことが事業部に落とし込まれていないのはよくあることだ。」
そして、すこし沈黙をおいた後、次のような発言がありました。
「私たちはどの程度、心を開きあって、お互いをリスペクトできているのだろうか。いいや、わたし自身が皆のことをどれだけ信用し、心を開いて話が出来ているのだろうか。
どこかで、現場の課題は幹部の課題と捉えてしまっているわたしがいる。事業部の課題に、自らが向き合っていくのは、わたしの問題ではないとどこかで思ってしまっている。
わたしが課題から逃げている。これはわたしの問題である。
トップであるわたしが課題を自分ごととして捉え、皆と一緒に向き合おうとする姿勢を示さなければ、皆も本気にはならないだろう。問題提起された事業部長はやらされ感となり、他の幹部は自分とは関係ないと思ってしまう。
まずはわたしから改めなければいけない。社長として申し訳ない。まずはわたしから変わる。これはわたしからの宣言と受け取って欲しい。」
その後、幹部は社長の発言を聞いてどう感じたのか意見を聞きました。
- 一人ひとりから課題と向き合い切れていない
- 会社を背負う覚悟を持てていない
- 幹部同士で腹を割って話せていない
などの意見が出ました。 そして、「今の状況ではいけない、皆でこの状況を乗り越えていこう」という共通見解が生まれました。
次月は、一人ひとりがこれからどのような姿勢で幹部ミーティングに臨むかを発表する予定です。
幹部の意識レベルの質は、会社の質
目に見えない意識の状態を高めていくことは容易なことではありません。
また、一定の時間を要するものです。
しかし、一人ひとりの意識状態と相互信頼度は、確実に会社全体の生産性と課題解決の質と量に影響します。幹部の意識レベルの質=会社の質といっても過言ではないでしょう。
市場が混沌としている今だからこそ、幹部の絆を深め、会社の未来を本気で考える機会を作られてはいかがでしょうか。
このレポートの解説者
江畑 直樹(えばた なおき)
株式会社日本経営 副部長 株式会社ミライバ 取締役
2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事する。約2年間にわたる医療・福祉のグループ法人への出向を含め、これまでに100以上の医療法人、社会福祉法人の支援実績を有する。
2018年に株式会社ミライバを設立し、組織の風土改革や次世代リーダーの育成、幹部・管理職の視座の向上等をテーマとする組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。
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